Living Autumn

Living Autumn

カナダの秋は一瞬で過ぎますが、その優美さには心惹かれるものがあります。
生命のサイクルでいえば、秋は命の終盤。元気な夏の活動期を終えて、最後の灯火を懸命に燃え上がらせ、散っていく…、そんなイメージです。


木々に囲まれたこの土地では、落ち葉の美しさに毎年感動します。
カエデ(メープル)、クリの木、もみじ、ポプラ、白樺……赤と黄色のコントラストが、一面に広がり、まるで自分の根元に温かい布団を敷くようです。大きなカエデの葉は、顔の1.5倍ほどのサイズも!
晴れた日に、落ち葉に彩られたトレイルを歩くと、夏に活発に動きすぎた身も心も、ゆっくりと地に足がつきグラウンディングされていくような感覚になります。


11月も過ぎると、もうハーベストのシーズンも終わりです。今年のフィナーレは、なんと初めて熊に遭遇しました!自然に入るとき常に緊張感はあっても、実際に出会うとやはり驚きます。茂みが少し開けた場所で、2匹の大きな熊が静かに戯れあっていたのです。

先に茂みに隠れて観察していた人に気づかなければ、私も熊の存在に気づかなかったかもしれません。10メートルほどの距離を保ちながら、私も茂みに身を隠して観察していると、恐怖よりも感動が勝ってきました。もしかしたら、熊たちは私たちの存在に気づいていたかもしれません。それでも気にする様子もなく、冬籠り前のひとときを楽しそうに遊ぶ姿が、とても愛おしく感じられました。
普段歩いている山道に、確かに彼らが暮らしているという現実。自然界では、私たちも多くの生き物と空間を分かち合っている。そんな当たり前を改めて意識した瞬間です。


熊がいても通らなければ進むことができない一本道。勇気を持って、脅かさないように、そして「通りますよ!」と声を出して、横切らせてもらいました。なんでも熊は人間の声に一番警戒するらしく、ベアベル(熊よけの鈴)よりも何よりも、人間の声から遠ざかるらしいです。帰り道でもまだ熊たちはいて、今度は夢中でベリーを食べていました。

もうひとつ。今年は久しぶりに、鮭の遡上を見ることができました。勢いよく流れる川の上流を目指し、流れに逆らいながら懸命に前進する姿には、毎回心を打たれ胸が熱くなります。なにか生き物の本質を見させてもらっているというか、命を燃やし尽くすその姿には、どんな言葉よりも勇気をもらえる気がするのです。


春に命が芽吹き、夏にそのエネルギーがピークを迎え、秋に散り、冬はお休み。
派手さはなくとも、秋には“優秀の美”のような粋な魅力があります。そして、一年のたくさんの命と恵に感謝をして、また新しい季節を迎えるためのリセットをする。そんな秋の景色が、私は大好きです。

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